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証券経済研究 第98号(2017年6月)
ECBの非標準的金融政策の評価をめぐって
田中素香(中央大学経済研究所客員研究員・東北大学名誉教授)
〔要 旨〕
ECBの非標準的金融政策(Non-Standard Monetary Policy: 以下NMPと表示)について,2017年3月9日のECB政策理事会はそれまでのデフレ警戒的なスタンスから一転して「リスク・スタンスの改善」を強調した。NMPが成果をあげ,ユーロ圏の経済成長も勢いを増している。これまでECBのNMPに対する評価は肯定的から全面否定的まで非常に大きなスペクトラムを示している。本稿はそのNMPについて,第1次から第6次までの展開をフォローする。その上で,イタリアなどユーロ圏周縁国には銀行危機などを含めて構造問題が残ることを認識しつつも,基本的に積極的な評価を試みる。その際,①基軸通貨国米国の非伝統的政策とその周辺国に位置するユーロ圏との立体的な構造を分析に生かす,②ポスト・ユーロ危機という時期区分を行い,デフレ・不況そしてマイナスの自然利子率という特異な歴史的時期に対応する金融政策としてNMPを捉える,という2つの視角から議論を進める。
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