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証券経済研究 第98号(2017年6月)
店頭デリバティブ市場の変貌—BIS統計に基づく考察—
吉川真裕(当研究所客員研究員)
〔要 旨〕
店頭金利デリバティブ市場は1位のアメリカ,2位のイギリスに取引が集中しており,その他の国々でも取引が活発な国々とそうでない国々が存在する。GDPや金融市場の規模と比較してイギリス・アメリカ・フランス・香港・シンガポール・オーストラリアなどでは取引が盛んであり,日本・ドイツ・イタリア・カナダ・中国などではそれほど取引が盛んではない。
店頭金利デリバティブ市場で2016年に生じた大きな変化はドル建て取引の急増とユーロ建て取引の急減,そしてドル建て取引の中心市場であるアメリカとユーロ建て取引の中心市場であるイギリスの取引シェアの逆転であったが,これがBISの四半期報告書が分析した通り,金融政策の違いによる一時的な現象であるのかどうかは現時点では定かではない。2019年4月のBISによる次回の調査結果を踏まえて判断する必要があるものと考えられる。ただし,2019年4月にはイギリスが欧州連合を離脱している予定であり,現在,イギリスで行われているユーロ建て取引が本国市場に還流しているのかどうかという別の問題も存在する。
BISの四半期報告書によれば,ラテン・アメリカ6か国通貨の店頭デリバティブ取引の82.7%(+24.4%)はアメリカで,中東欧11か国通貨の店頭デリバティブ取引の72.8%(+10.2%)はイギリスで,新興アジア8か国通貨の店頭デリバティブ取引の36.9%(+14.4%)は香港,31.5%(+11.7%)はシンガポールで取引されており,本国以外でのオフショア取引が拡大していることも新たな趨勢となりつつあるようである。
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