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証券経済研究 第99号(2017年9月)

住宅ローン借入が家計の危険金融資産投資に及ぼす影響

上坂豪(九州国際大学現代ビジネス学部教授)

〔要 旨〕
 本稿の目的は,日本の家計の危険金融資産投資に影響を及ぼす要因として住宅ローン借入に注目し実証分析を行うことである。その際,以下の2つの仮説を検証した。(1)現在の住宅ローン負担がもたらす追加的リスクや流動性不足が,危険金融資産投資を抑制する。(2)将来の借入予定がもたらすリスクや流動性不足に対する認識が,現在の危険金融資産投資を抑制する。
 家計の金融投資に関する3年間分の個票データを用いて計量分析を行った結果,以下の結論が得られた。(1)現在の住宅ローン負担が重い家計ほど危険金融資産の保有を避ける傾向がある。一方,すでに危険金融資産を保有している家計の投資行動へは有意な影響は見られない。(2)将来住宅購入資金を借り入れる予定の家計は,そうした予定のない家計に比べて危険金融資産の保有を避けたり保有比率を引き下げる傾向がある。(3)住宅購入資金の調達手段として借入のみを検討している家計の方が,それ以外の手段も同時に検討している家計より,わずかではあるが危険金融資産投資を抑制する。
 さらに,住宅ローンを組むために必要な頭金貯蓄の手段となりうる安全金融資産の保有比率を被説明変数とする式を推計したところ,現在の住宅ローン負担が安全資産需要を増やすことが無いのに対して,将来の住宅購入のための借入予定は安全資産需要を増やすという結果が得られた。この結果は,現在の住宅ローン負担が危険金融資産の保有比率に影響を及ぼさない理由を説明するシナリオと整合的なものである。

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